日銀の金融暖和について

金融・財務・経済

日本では1990年半ばの不動産バブル崩壊によって、景気が長く低迷することが起こっています。
2000年代に入っても積極的な公共事業投資などで一時的に景気が回復しても、再び景気が落ちてしまうことに陥っています。
その結果として、バブル崩壊以後の日本では長期でデフレ経済が進行してきました。
デフレ経済が続いてきたことで、消費者は節約志向となり、企業の業績が低迷し、賃金が上がらないデフレスパイラルが起こっています。
このデフレスパイラルを断ち切らないと日本経済の復活はないとして、2012年からはアベノミクスが始まりました。
アベノミクスではデフレ脱却に向けて3本の矢を放っています。

3本の矢の中には金融政策が含まれており、日銀による金融緩和を後押しすることに繋がっています。
日銀では2012年から大規模な金融暖和を実施することで、デフレ経済からインフレ経済への移行を目指しています。
大規模な金融緩和の第1弾では資金供給量を従来の3倍にすることで、為替市場では円安を進行させることに成功しています。
為替市場で円安が進んだことで、外需産業を中心として企業業績が上向き、景気が回復傾向となりました。
また、大規模な金融緩和は第2弾も行われて、日本の株式市場では上昇傾向が強まりました。
その結果として、代表的な株価指数では8000円台に低迷していたものが、一時20000円台を付けるようになっています。
国内の株式市場が活況になることで、消費者マインドが改善して経済がインフレになっていく見込みが出ていました。
しかし、日本では消費税が5%から8%になったことをきっかけとして、再び消費者マインドが悪化することが起こっています。また、商品市場では原油価格の値下がりが顕著となり、日銀の思惑どおりにインフレが進まない環境が出ています。
そうした状況があることから、日銀ではデフレ脱却のために過去に類がない政策を用いることになってきます。
2016年1月にはEUに続いて、マイナス金利を導入することを決めています。

グラフ

マイナス金利を導入することで、銀行から市中へ出回る資金を増やし、景気をてこ入れすることを狙っています。しかし、マイナス金利は銀行の企業収益を悪化させるデメリットが表面化してきています。そのため、今年9月の金融緩和ではマイナス金利の深掘りは見送られています。
9月の金融緩和では日銀によるETFの買い入れ額が増加されると同時にTOPIX型ETFを増やす方針が発表されました。
TOPIX型では銀行の業種の比率が高く、銀行株への買い支えが期待されるようになっています。
また、日銀では長期金利をゼロ付近に調整していく方針を打ち出しています。
長期金利をマイナスにしないことは、銀行への収益を悪化させないことに配慮していると考えられます。その結果として、今後は長期金利をコントロールすることが重視される政策へと移っていくことになります。
しかし、歴史的に長期金利をコントロールできた国は存在していないため、今後は難しい舵取りが行われる可能性が高いです。

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