若者貧困に見る今後の課題

金融・財務・経済

厚生労働省の国民生活基礎調査(2012)によると相対的貧困率は16.1%となっています。
これをさらに詳しく見た、性別、年齢層別、相対的貧困率は、上記基礎調査を基に算出した『「阿部彩(2015)貧困率の長期的動向・国民生活基礎調査(1985~2012)を用いて」貧困統計ページ』によれば、男性は、20~24歳の貧困率が特に高く21.8%、同じく女性は19.5%となっています。

また、男性は25~29歳以降は10~13%で移行し、60~64歳から徐々に増加するものの、80歳以上でも17%に留まりますが、女性は、20~24歳で一つ目のピークを迎え、その後、50~59歳から急激に増加し70歳以上では20%を超える数値が続いて、35~39歳からは常に女性の方が男性より高い貧困率となっています。

このような現象がおきる原因は、第一に労働市場に問題があります。ワーキングプアという言葉があるように働いていても収入が少なく、貧困から抜け出せない若者がたくさんいます。
2008年に発生したリーマンショックの際に、企業は学生の内定取り消しや非正規労働者の大量雇用等によって人件費の削減につとめました。
非正規労働者なら給与も低く抑えられ、経営悪化した際には解雇がし易いためで、この状況は永く続き、収入面での不利益に加え、いつ解雇されるかわからないという不安がつきまとっています。正規社員ではない、契約社員、派遣社員あるいはアルバイト職員は収入面での不利益ばかりでなく他の問題も抱えることにな
ります。正規職員は業務や研修等を通じて必要なスキルを身につけていくことができますが、非正規労働者の場合にはその面でも不利益をこうむっており、解雇あるいは離職後に新しい職場を探しても、求められるレベルの技術・技能を習得できていないことが多く、希望の職に就職することが困難な状況です。

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この事は、若者の側だけの問題ではなく、企業にとっても大きなマイナスになっています。日本の雇用形態は従来、終身雇用の制度が多くの企業で取られていて、業務に必要な技能・技術は先輩から後輩へと引き継がれ、企業の財産として引き継がれてきました。
終身雇用制度の善し悪しは別として、このような技能・技術継承の機会が減少したのは間違いがなく、日本全体で見れば大きな損失になります。
また、ブラック企業という言葉で表わされるように労働者を違法な勤務条件の下で働かせる企業の存在も社会問題となりました。
学生アルバイトも含め、若者たちを使い捨てにする社会は、あってはならないことです。
このように、いわゆる正規労働者と非正規労働者との待遇の格差は大きく、特に女性や若者の非正規労働者の割合が高くなっていることは、男女ともに経済的にも精神的にも結婚したくてもできない状況を招き、その結果結婚している人の割合が低く、少子化による人口の減少とも関連してきます。
正規労働者と非正規労働者の待遇格差を解消していくことは、貧困を減らしてその連鎖を断ち切り、少子化の現象を緩和していく上でも重要な課題です。

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