日本を含む世界のほとんどの地域では太陽暦が使用されていますが、明治維新までは太陰暦(旧暦、天保歴)が使用されていました。旧暦の決め方は“太陰暦は新月と新月の間を1か月とする”“春分、夏至など太陽の動きから算出される「中気」の日で月を決め、春分のある月が2月、夏至は5月、秋分が8月、冬至は11月とする”などの複雑なルールがあります。このルールによって決められた月を元に曜日(六曜)が定められます。
天保歴に従って太陰暦のルールで月を決めると、2033年後半は旧暦の9月の次が11月となってしまうのです。この理由ですが、太陽暦には4年ごとに閏日が存在します。太陽暦よりも1年が11日短い(354日)である太陰暦も閏月が存在するため、3年毎に13番目の月を挿入することになっていますが、それでも暦のズレは完全に解消されずに蓄積されます。厳密にルールに従えば2033年は閏月を挿入しない年なので、「10月」が消滅してしまうことになります。これは1844年に天保暦が導入されて以来初めてのことで、2147年と2223年にも同じ問題が生じることになります。
現在の日本において六曜は公的にも宗教的にも一切認められていません。六曜は単なる民間信仰(迷信)に過ぎないので誰か特定の人や組織が暦を決定している訳ではありません。日本カレンダー暦文化振興協会は旧暦問題を解決すべく2015年8月に、2033年11月に閏月(暦を調整するために例外的に設けられる「13番目の月」)を置くという案を発表しましたが、これは厳密なルールに従ったものではありません。このためカレンダーを制作する印刷会社によって暦の解釈が異なり、日本全国で共通の六曜が定まらなくなってカレンダーごとに違う暦が記される恐れがあります。
現在は太陽暦を採用しているので大半の人にとって旧暦問題は関係ないかもしれませんが、葬儀業界の関係者は大変な問題です。もしも友引や仏滅といった六曜が定まらなければ、葬儀業界に混乱が生じてしまいます。一般的に友引日について「この日に葬儀を行うとなくなった人が友を引き寄せて一緒に冥土に連れて行く」という迷信があるため、葬儀を避ける習慣があります。葬儀会社や火葬場、寺院は休業日とすることができるのです。火葬場では利用者の少ない友引の日を休業日にして火葬炉のメンテナンスを行ったり、お坊さんが外出する日にしたりする寺院も多いのです。六曜は仏教の教理とは関係ありませんが、葬儀の予定が入らないので友引日に外出して余暇を楽しんだり、家族旅行に行ったりする寺院も多いのです。葬儀社でも電話の受付係を除き、スタッフの休業日とする会社があります。
2033年は団塊世代が80代を迎える頃で葬儀需要が急増することが予想されています。このような状況で葬儀業界の関係者が共通の基準としてきた六曜が定まらなくなれば、現場で大混乱が生じる恐れがあるのです。結婚業界でも同じような問題が生じる可能性があります。
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