所得税と住民税は、所得に対して課税される点や、給与所得者の場合に毎月の給与から税額分が天引きされる点など、共通している部分もありますが、様々な部分で違いがあります。
違いの例を挙げる前におさえておきたいことは、住民税は道府県民税や市町村民税の総称であり、正式な名称ではないということです。
住んでいる道府県に対して納める道府県民税と、住んでいる市町村に対して納める市町村民税は、それぞれ適用される税率が異なっているものの、徴収方法が一緒であることや、市町村が2つの税の徴収業務を一括しておこなっていることなどから、道府県民税と市町村民税はひとまとめにして、住民税として扱われています。
以上の点を踏まえて所得税と住民税の違いを見ていくと、まず異なるのは税の納付先です。
住民税は前述の通りで、申告と納税の手続きは市町村役場の課税課や市民税課などと呼ばれている部署に対して行います。
一方、所得税の納付先は国で、申告と納税の手続きは住所地を管轄している税務署に対して行います。
なお、税務署で申告と納税の手続きを行った人は、住民税の計算に必要なデータが税務署から市町村に提供されるため、市町村役場での住民税に関する手続きは行う必要はありません。
税額の計算方法と徴収方法も異なります。
所得税の場合、計算方法については、給与所得や配当所得、山林所得、譲渡所得、雑所得などといった所得の種類別に所得金額を計算し、その後所得金額を合算し、超過累進税率を適用して税額を計算する総合課税と、不動産の譲渡所得などのように、総合課税の所得金額に算入せずに特定の所得のみで所得金額を計算し、税額の計算を行う分離課税の2種類の方式があります。また、徴収方法についても、税務署に自ら税額を申告して納める申告納税方式と、予め税額分を源泉徴収する方式の2種類があります。
一方、住民税には、所得に応じて税額が異なる所得割と、すべての納税義務者に一律で課される均等割の2種類があります。
住民税の場合も申告書の提出が必要となっているものの、税額の計算までは行う必要はありません。
税額の計算は、市町村が確定申告書、住民税の申告書、会社から提出された給与支払報告書の3種類の書類をもとに行い、後日納税義務者に対して通知します。
この方式は賦課課税方式と呼ばれています。また、徴収方法については、納税通知書に従って自分で納税を行う普通徴収と呼ばれる方法と、予め税額分を源泉徴収する特別徴収の2種類となっています。
なお、所得税については、所得が一定の水準に達しておらず税額がゼロとなっている場合は税務署への確定申告が不要となりますが、住民税については所得が均等割の課税基準を満たしていれば申告書類を提出しなければなりません。
住民税の均等割の課税基準となっている所得金額は、所得税の課税基準となっている所得金額より低く設定されているので、確定申告の必要がない人であっても、住民税の均等割の納付が必要となることがあります。
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