ばらかもんの面白さとは

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ばらかもんは現在ガンガンオンラインと月刊少年ガンガンの二つの媒体で連載している漫画作品です。
かつてゲームのコミカライズを連載していた漫画家ヨシノサツキ初となるオリジナル連作作品であり、現在ではガンガンの人気作品のひとつとされるようになりました。
11巻まで刊行されておりシリーズ累計発行部数200万部以上となっており、アニメ化も経験する作品に成長しました。
ではこのばらかもんの面白さはどこにあるのかというと、まずやはり最も大きいのが、優秀でありながらも気難しい性格をしている主人公である若き書道家、半田清舟が単身五島に渡り、これまでの都会暮らしとは全く異なる離島で生活をしていく様子にあります。

ばらかもん

コンビニもカラオケも何もない、正に田舎と呼ばれるような場所に来た半田は最初こそ戸惑いや怒りを感じますが、島で出会うのんびりとした人々や元気な子供たちと触れ合っていくなかでゆっくりと変化していきます。
日本人の大多数が経験したことのない南国の離島での生活を疑似体験できるということで言えば、この面白みはばらかもん特有のものであると言えるでしょう。
かつて書道界の重鎮から自信の作品を酷評されたことで逆上して起こした暴力事件のことを素直に見つめ直せるように成長していき、そして東京に戻った際にそれを謝罪するというような人間的な成長は、この作品の成長のドラマでもあります。
加えて半田と親しくなる少女、琴石なるなどの子供たちが放つ言葉や普段の行動からは、大人になってから忘れてしまった感情を想起させてくれますから、毎日の中で疲れを感じるようになってしまった大人たちの心にもしみこみます。
またこうした作品のストーリーなどの楽しみ方のほかにも、作者が五島列島で生まれたために描くことができる、まるで自分が五島に行ったかのようなみずみずしい風景も面白みのひとつです。


ばらかもん(10) [ ヨシノサツキ ]

空から降り注ぐ太陽、青く澄み渡る海や川、緑が生い茂る山々など、その全てが読む人を優しく包み込んでくれます。
もしこれまで田舎を舞台にしたマンガやドラマ、映画などを面白いと思ったことがあるのであれば、ばらかもんの空気はその人にとって最高のものになってくれることでしょう。
現在では本編のほか、主人公半田清舟の高校時代を描いたスピンオフ作品である「はんだくん」も刊行されており、本編と併せて読むことでより作品に没入していくことができます。
特に本編では登場機会がさほど多くなかった東京の人物を主に描いたり、親友である川藤との日常風景などばらかもん本編とは全く異なる空気を描いているため、もしばらかもん本編を読むよりも先にこちらを読んだとしても、別の作品として楽しむこともできます。
田舎を舞台にし、現地の人と都会で生まれた人が全く違う価値観を持ちながら心の交流をしていくという作品は決して少なくありませんが、この作品は特有の空気感とストーリーが魅力となっています。
もし日々の生活に疲れ、癒しを求めているというのであれば一読の価値があるでしょう。


ばらかもん 第四巻【Blu-ray】 [ 小野大輔 ]

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