日本語の文章を英語に訳す作業はとても困難な作業です。特に日本で生まれ育った日本語を母語とする人が行う際はなおさらです。英訳を行う際、気をつけなければならないことは数多くあります。
まずは、時制に注意するということです。時制を無視すると、読者に間違った情報を与えてしまいます。日本人は日本語の時制を学んでいないことが多いですが、英訳する上では必須の知識になります。実際に作業を行う際には、文章の冒頭で分かるように訳しておけば、読者も混乱することはなくなるはずです。
マニュアルや規定といった文章の英訳を行う際には、知識量が重要になります。ジャンルが多岐にわたるため、様々な知識を習得しておく必要があります。ジャンルや文脈にあった、適切な言葉を使う必要があるのです。例えば、延長戦を意味する英単語は「extra inning」ですが、「innnig」は野球で用いられる単語です。サッカーの場合は「extra time」とするべきなので、こういった知識を持っていないと正しい文章が書けないのです。
表現の仕方も気をつけなければなりません。例えば「shall」の使い方です。説明書や規定では多く使われる言葉です。日本語では「…すべきである」と訳されることが多いですが、この「shall」は「must」と同じ意味を持っていて、「命令」や「義務」を表すときに使う非常に強い言葉なのです。どんな人が読むのか、またはどういった文章なのかをよく考え、適切な表現を用いるようにしましょう。
また、日本語でカタカナを使って表現する言葉も、英語であるとは限らないのです。例えば、スポーツの試合などで「グループリーグ」や「決勝トーナメント」という表現を目にすることがありますが、英語に訳す際は「first round」「second round」という表現が正しいのです。
日本語と英語の言い回しの違いも知っておかなければなりません。具体的には、予選を勝ち抜いたときは、英語では予選を勝ち抜いたという表現ではなく本大会に参加する資格を得たことを前面に出します。つまり、「won the preliminary competitions」ではなく「qualifying for the final competition」が英文の読者にとって分かりやすい表現になるのです。
近年では機械翻訳が発達してきており、短い文章では実用的な英訳が出来ることもあります。しかし、多くの場合は意味が通じない文章になってしまうはずです。その理由は、言葉を一つ一つ訳しているためです。英訳をする人間が同じように訳すと、意味が通じない訳文が出来てしまいます。日本語には日本語らしい表現があり、英語には英語らしい表現があります。機械にはその表現を理解し使うことが出来ないので、人間が行うのです。そのためには、単なる知識の他に想像力が必要になることもあります。柔軟な考え方で英訳を行いましょう。
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