NECはNippon Electric Companyの略で、正式名称は日本電気株式会社です。
東京都港区に位置する創業110年を超える老舗電機メーカーです。
日本電気の名を冠していますが、意外なことに設立時は日本人創業者とアメリカの企業が出資を行う日米の合弁企業としてスタートしました。
創業時から通信事業が主軸で、電話交換機の製造などを行っていました。
この通信技術の蓄積があり、1928年に執り行われた昭和天皇即位式の写真を送る写真電送装置を発明し、これが現在のファックスとなっています。
当時は電気技術が欧米から輸入されていたことが多かったものの、この写真電送技術はnecによる国産技術によって確立され、電気通信技術を大きく発展させることになりました。
1960年代に入ると宇宙事業にも参画し、衛星通信の受信装置を開発したり、日本初の人工衛星を開発するなど地球規模の活躍が目立ちます。さらに、同時期に始まったIC回路の開発が「C&C」(Computer&Communication)というスローガンのもと、通信のみでなく情報技術を主軸としていくnecの企業形態に大きく寄与しました。
1980年代になって徐々に市場が成立し始めた個人用コンピューター分野での国民期と呼ばれるほどに普及するパソコンの発売や、世界一位の生産量を誇った半導体事業など、確実に通信・情報企業としての企業形態を作っていきます。
その後、2002年には当時の最先端スパコンの1000倍の性能を誇る気候変動の予測を目的とする地球シミュレータの開発や、個人向けノートパソコンなどで存在感を発揮します。
2003年には、当時の宇宙科学研究所が打ち上げた小惑星探査機である「はやぶさ」の開発にも大きく貢献しました。多くの企業がプロジェクトに参加しましたが、necの各グループ企業は探査機のシステム設計や搭載機器の開発設計、軌道計算・衛星管制システムの開発と運用など、特筆すべき分野を担当しており、プロジェクトの中核として重要な役割を担っていました。
プロジェクト内での最も大きな功績が、イオンエンジンの開発です。これは、イオン化した燃料を高速噴射させることで推進力を生み出す人工衛星用のロケットエンジンです。このイオンエンジンは推進力を生み出すために必要な燃料が他の方式を利用したエンジンより少なくて済むという大きな特徴があります。
「はやぶさ」は目的地である小惑星にたどり着くまでに多くの困難に見舞われました。紆余曲折を経ながら地球に帰還できたのは、イオンエンジンの性能によるところも非常に大きかったのです。
現在のnecは、スマートフォン事業からの撤退など個人向け事業の規模を縮小し、法人向け事業に中核を移しています。しかし、クラウドコンピューティングソリューションの提供やビッグデータの活用など、長い歴史の中で培ってきた技術を基礎とする情報通信企業であることに変わりは無いのです。
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