財務体質の改善が第一の目的として、大企業が資本金を減資して行うのが中小企業化計画です。
最近では吉本興業が約125億円の資本金を1億円に減資や、台湾の精密機械大手、鴻海精密工業の傘下となったシャープが1億円の減資を試みたものの批判を受けて、5億円の原資に留めたことなどは記憶に新しいところです。
この2つの企業も累損解消が主な目的で、吉本興業は100億円を超える累積損失があったため、資本金のうち約124億円を取り崩して、損失穴埋めに充てています。
シャープはご存知の通り債務超過になるほど累損損失が増えていた状況で同様の目的も、99%以上の減資といえば奇策です。経営破たんしていない大企業が99%の減資を行おうとしたのは異例として、大きく報道されたものです。
シャープが大幅に減資して市場では禁じ手とさえ映る中小企業化計画を実行したのは、大きく膨らむ累損損失を一掃し、財務体質の改善を図ることが第一ですが、資本金を1億円(実際には批判を受け5億円)とすることで中小企業と見なされ、税制上の優遇措置などのメリットを受けるのも目的だったようです。
資本気を減らし累損損失を一掃しておけば、業績回復に伴い今後配当に回す利益も増やすことができます。それに公募増資や資本提携なども進めやすくなります。
株主にとっては資本金を減らすだけでは1株当たりの価値は減らないので、デメリットではないのです。
しかし結果的にこの禁じ手に対する批判は大きく、1億円ではなく5億円という、大企業として納税義務を果たす5億円までの減資の変更で決着します。
それでも約1200億円あった資本金を大きく切り崩しての5億円は、世間や株式市場の風当たりの強さの影響を感じて落ち着いた額で、当初は1億円の予定です。
その当時、シャープは大幅赤字が続く一方で、具体的なリストラ策や再建策など計画に欠けており、そこで中小企業の優遇措置を使おうとする経営陣の逃げ腰姿勢が批判の背景にあったのです。
では中小企業化計画で累損損失穴埋め以外で得るメリットが気になるところです。まず法人税では税率が低いことで、大企業が23.9%に対し、中小企業は15%(800万円以下の所得について)という税率の差が挙げられます。これは地方税にも連動します。
また、欠損金の繰越控除の金額の差も大きく、大企業は50%にとどまるのが、中小企業では100%控除が可能なところです。
個別では交際費が大企業では全額経費になりませんが、中小企業では800万円以下であれば全額経費になります。
法人事業税においても、大企業は外形標準課税によりたとえ赤字でも発生するのに対し、中小企業であればこの不適用となります。
この外形標準課税は、事業所の床面積や従業員数など外観から客観的にできる基準をベースにして課税するもので、1億円を超える資本金の法人が対象です。
シャープが1億円の原資の目的は、この外形標準課税の回避と欠損金の100%繰り越し控除だと指摘されています。結局批判を受け5億円の減資だったため、これらの優遇措置は受けられなかったわけです。
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