ボクシングの世界チャンピオンというのは、実は各階級に一人ずつしかいないというわけではありません。というのはまず、ボクシングの組織が複数あるからです。日本で公認されている団体はWBA、WBC、IBF、WBOの四つで、団体ごとに階級があり、それぞれにチャンピオンがいるので、たとえばバンタム級の世界チャンピオンと言っても四人ぐらいはいるということになります。
ただ、一つの階級の世界チャンピオンが四団体で必ず四人というわけではありません。というのは、統一チャンピオンも存在しているからです。統一チャンピオンというのは、別の団体のチャンピオンと試合をして勝った選手のことで、もしWBAとWBCのバンタム級のチャンピオン同士が試合をして、WBAの選手が勝った場合は、その選手がWBAとWBCの統一チャンピオンということになります。中には、四団体すべての統一チャンピオンという選手が出ることもあります。
一方、団体は四つなのに、同じ階級のボクシング世界チャンピオンが四人よりも多いということもあります。なぜかというと、暫定王者という地位が存在するからです。暫定王者とはなんなのかというと、たとえば、正規の王者にけがなどのアクシデントがあって長期間にわたって試合が出来なくなったとします。そうすると、ボクシング団体としては世界タイトルマッチが組めなくなってしまうので困ったことになります。なので、正規の王者が試合が出来るまでの間、仮の王者として世界戦をしてくれる選手を選ぶのです。この場合、基本的に、暫定王者はその時の世界ランク一位の選手が自動的にスライドするのではなく、ランキング一位と二位の選手が試合をして、勝った方が暫定王位になるという風に、必ず選ぶための試合が行われます。団体としてはタイトルマッチが多ければ多いほどお金が入るので、出来るだけ世界戦を組みたいのです。
では、正規の王者が戻ってきたら、暫定王者はどうなるのでしょうか。その場合は、戻ってきたからもう王者ではなくなったと言われるということはありません。戻ってきたら、正規の王者と暫定王者がタイトルマッチを行うのです。もし、暫定王者が勝てば、正規の王者に繰り上がるということになります。
ちなみにWBAではスーパー王者というランクが存在しています。他の団体の王者と試合をして勝ったらスーパー王者ということになり、スーパー王者なったら普通の王者よりも位が一つ上がるので、普通の王者が空位になり、チャンピオンを決めるタイトルマッチが行われることになります。なので、WBAの場合、一つの階級に、スーパー王者、普通の王者、暫定王者と、合計三人の王者が存在するという状況が生まれる可能性があります。このように、チャンピオンが何人もいるという状況は、タイトルマッチがたくさん組めるというメリットもありますが、チャンピオンの権威が下がってしまうというデメリットもあります。
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